HIV抗体検査と陽性の場合の妊婦や胎児への影響

カテゴリ:感染症

記事の種類:検査項目

HIV抗体検査の意味

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は重篤な後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスです。
平成28年4月1日以降に妊婦健康診査の検査項目に追加されました。

HIVはCD4リンパ球に感染し、AIDSを発症すると免疫機能を破壊します。
全妊婦の内、約0.3%が1次検査で陽性となりますが、その内の殆どである約95%は2次検査で陰性となり、1次検査での偽陽性の確率が極めて高いのが特徴です。

一方でAIDSを発症してから初めてHIVに感染していることに気づく場合もあり、感染に気づかずに出産し、母子感染を引き起こす場合があります。

検査方法

HIVの検査は1次検査を実施し、もし陽性反応が出た場合は、確定診断のために2次検査を実施します。

1次検査(スクリーニング検査)

1次検査では、第1段階としてHIV-1/2抗体検査、第2段階としてHIV抗原抗体法による検査が実施されます。
HIV抗体検出の方法として凝集法(PA法)、酵素免疫抗体法(EIA)、イムノクロマトグラフィー法(IC法)があります。
これらの方法は、HIV-1/2抗体の両方が検出できます。
また、HIV抗原抗体法のほとんどは酵素免疫抗体法で行われ、これはHIV-1/2抗体に加えてHIV-1抗原の検出も可能です。

なお、HIVに感染後でも抗体が検出されるまでのウインドウ期は通常1~3 ヶ月間あり、感染してもすぐには検査結果が陽性にはなりません。

2次検査

上述したように、1次検査陽性者の内の約95%が偽陽性であり、多くの場合、抗原抗体反応の可視化や遺伝子レベルでの検査を実施する2次検査で陰性となります。
2次検査には以下の方法があります。

ウェスタンブロット法

本来不可視である抗原抗体反応を可視化して抗原を確認します。
電気泳動で分子をふるいにかけ、分離したタンパク質を膜に転写した後、抗体を利用して免疫染色(抗体に色素や蛍光色素を結合させる)を行い、抗原と抗体を結合させることで、目的のタンパク質のみを検出する手法です。

RT-PCR法

RTは逆転写(Reverse Transcription)、PCR(Polymerase chain reaction)はDNAのポリメラーゼ連鎖反応を示し、DNAの増幅法の1つです。
逆転写により合成されたDNA(cDNA)からmRNA(伝令RNA)を分解し、特定の遺伝子情報を増幅して解析します。

スクリーニングで妊婦の偽陽性率が高い理由

HIVスクリーニング検査の一般的な偽陽性率はわずか0.3%です。
しかし、妊婦の場合、HIV抗体に類似する抗体を持っている頻度が一般よりも高く、またHIV抗体検査は非常に敏感なため、HIV以外の抗体でも陽性反応となってしまうのです。

妊婦も含め、一般的に以下の場合は1次検査で偽陽性となる確率が高くなります。

  • 妊婦
  • 多産の女性
  • 血液腫瘍
  • 膠原病
  • 原発性胆汁性肝硬変
  • 原発性硬化性胆管炎
  • アルコール性肝炎
  • ヘルペスウイルスなどのDNAウイルス感染症

感染経路

HIVの主な感染経路は以下となります。
特に最も感染経路として多いのは性行為によるものです。

  • 性行為
  • 輸血
  • 注射
  • 母子感染

治療法

現在は根治治療の方法はありません。
何も予防策を講じない場合の母子感染率は約30%になりますが、抗HIV薬と選択的帝王切開による分娩を行うことで、母子感染を99%防止することができます。

ガイドラインではHIV陽性妊婦に対しては、母子感染の予防のために以下を実施することを推奨しています。

  • 妊娠中の抗HIV薬(アジドチミジン)の投与
  • 選択的帝王切開による分娩
  • 人工栄養
  • 新生児に対する抗HIV薬の投与

陽性の場合にリスクのある疾患

母体

  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)

胎児

  • 母子感染による胎児へのHIV感染
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)

公開日時: 2017年10月08日  13:23:00

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