血算の正常値(基準値)と異常値の場合の原因と疑われる病気

カテゴリ:血液系

記事の種類:検査項目

血算測定の意味

血算は血球算定の略で、以下の各血液検査の総称です。

  • 赤血球数
  • 白血球数
  • ヘモグロビン
  • ヘマトクリット
  • 赤血球恒数(MCV・MCH・MCHC)
  • 血小板数
妊娠中に特に大きな変動があるのは赤血球と血小板数です。

赤血球数

妊娠初期では、悪阻などにより血液濃縮状態となるため、一時的に赤血球数は増加します。
しかし妊娠20週頃にかけて今度は妊娠に伴う循環血漿量の増加により、生理的な血液希釈が起こり赤血球数は減少し、貧血傾向となります。
この生理的な希釈による貧血と鉄分の不足による貧血(鉄欠乏性貧血)との鑑別が必要になります。

妊娠中は循環血液量は妊娠前と比べて約3?4割程度増加します。
これに伴い、妊娠20週頃以降は総赤血球量が増加していき、妊娠末期頃には妊娠初期と同程度の赤血球数に戻ります。

そのため、妊娠20週?24週頃は血液希釈(急激な循環血漿量の増加に対して赤血球の生産が追いつかない)により妊娠中で最も赤血球数が少ない時期となります。

白血球数

妊娠中は非特異的免疫に関する好中球や単球の増加により、白血球は赤血球とは逆に微増します。
妊娠中は感染がない場合でも1万/m?以上となる場合があり、子宮内感染の目安は1万5000m?以上とされています。
異常低値の場合は骨髄異形性症候群や白血病、異常高値となった場合は白血病の可能性があります。

ヘモグロビン濃度

ヘモグロビン濃度は血液中のヘモグロビンの重量を表します。
※ヘモグロビンは赤血球の中にある鉄を含むタンパク質です。
妊娠初期では一時的に赤血球が増加するためヘモグロビン濃度も上昇します。
その後、妊娠20週頃にかけて減少傾向になり、妊娠末期にかけて再度上昇傾向となります。

ヘマトクリット

ヘマトクリット血液中の血球の体積の割合を示し、通常は血液中の赤血球の体積比を示します。
そのため、赤血球数の増減に伴い、ヘマトクリットも同様に増減します。
ヘモグロビン濃度やヘマトクリットの減少により血液粘度が減少するため、胎児の発育促進や母体の血栓予防効果があります。

赤血球恒数(MCV・MCH・MCHC)

赤血球恒数は赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の3つの検査の値を組み合わせて算出したものです。
一般的に貧血の分類のために用いられます。
妊娠期には妊娠9週以降にMCVを用いて貧血の分類の診断を行います。
※妊娠9週以降に実施するのは妊娠8週までは血液の希釈は起きないためです。
MCVは平均赤血球容積、MCHは平均赤血球ヘモグロビン量、MCHCは平均赤血球ヘモグロビン濃度を示します。
この内、貧血の分類に必要となってくるのはMCVです。

MCVとは?

赤血球恒数の1つであるMCVは、赤血球の大きさ(平均赤血球容積:Mean Corpuscular Volume)を意味し、単位としてfL(フェムトリットル)が用いられます。(1fLは1μ?と同じ)
MCVの基準値は85~100fLです。
85fLより小さい貧血を小球性貧血、100fLを超える貧血を大球性貧血と呼びます。
なぜ、赤血球の大きさを調べるかというと、後述するように赤血球の大きさを調べることで貧血の種類を特定することができるからです。

赤血球の大きさと貧血の種類の関係とは?

ヘモグロビン濃度だけでは、貧血かどうかは判断できますが、どのような種類の貧血(生理的、鉄欠乏、葉酸欠乏など)かまではわかりません。
それを特定するためには赤血球の大きさが指標になります。
例えば鉄が不足している場合は赤血球が小さくなる特徴があり、小球性貧血となります。
そのため、ヘモグロビンが11.0g/dL未満(貧血)で且つMCVが85fL未満(小球性)であれば鉄欠乏性貧血と診断できるのです。
また、MCVが90fLを超える貧血の場合、葉酸欠乏性貧血ビタミンB12欠乏性貧血の可能性があります。
ちなみに、MCVが85fL未満であってもヘモグロビンが11.0g/dL以上の場合は、鉄欠乏状態ではあるものの貧血ではありません。

血小板数

妊娠期においては血小板数は徐々に減少していきます。
妊娠中は胎盤循環系の血小板消費により血小板の寿命が短くなります。
血小板数が14万/m?以下の場合、血小板減少症(突発性血小板減少症)の合併の可能性があり、注意が必要です。

また、妊娠20週頃に血小板が急激に減少する場合、妊娠高血圧症候群、更にアンチトロンビンの減少も認められる場合はHELLP症候群の前兆の可能性があります。

血小板が減少すると血が止まりにくくなり出血傾向になりますが、その目安は、一般的に3?5万/m?以下となった場合とされています。
このため、10万/m?未満となった段階で原因検査が実施されます。
血小板減少症では、稀ですが抗血小板抗体が胎盤を通じて胎児に入ることで、胎児や新生児の血小板減少症を引き起こす可能性があります。

逆に血小板数が増加傾向の場合、胎盤の血栓や塞栓の恐れがあり、流産や胎児発育不全のリスクが高まります。

正常値(基準値)

白血球数の正常値:1万5000m?未満
※1万5000m?以上の場合子宮内感染が疑われます。

ヘモグロビン濃度の正常値:11.0?12.9g/dL
※11.0g/dL未満の場合は貧血(生理的貧血、鉄欠乏性貧血など)です。
※9.0g/dL未満の場合は貧血の原因診断のための精密検査が必要です。
※13.0g/dL以上の場合は血液希釈障害になります。

MCVの正常値:85?100fL
※85fL未満の場合は鉄欠乏です。
※90fLを超える場合、葉酸欠乏やビタミンB12欠乏の可能性があります。
※101fL以上の場合は精密検査が必要になります。

血小板数の正常値:15万?40万/m?

異常値の場合に疑われる疾患

ヘモグロビン濃度が低い場合(11.0g/dL未満の場合)

  • 鉄欠乏性貧血(MCVが85fL未満の場合)
  • 葉酸乏性貧血(MCVが90fL以上の場合)
  • ビタミンB12乏性貧血(MCVが90fL以上の場合)

ヘモグロビン濃度が高い場合(13.0g/dL以上の場合)

  • 血液希釈障害

血小板が少ない場合

  • 妊娠高血圧症候群
  • HELLP症候群(アンチトロンビンが減少している場合)
  • 出血傾向(3?5万/m?以下の場合)

血小板が多い場合

  • 胎盤の血栓
  • 胎盤の塞栓症

白血球数が多い場合

  • 子宮内感染(1万5000m?以上の場合)

公開日時: 2017年11月11日  18:06:17

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